デザイン水槽でつくる自分だけのパーソナルアクアリウム入門
アクアリウムのコケは、山や盆栽などで見かける「苔類」「苔植物」とは異なります。水槽についているコケは菌類ではなく藻類の中に入り、水中に生活して光合成により自生する生物として定義されています。 水槽のコケも盆栽の「苔」も似たような感じに見えますが、実は水槽に付くコケにはさまざまな種類があります。一般的に見られるコケとしては、次のようなものが挙げられます。
・黒ひげゴケ:強い水流の場所を好み、ひげのように伸びる。除去しづらく増殖も速い。
・糸状藻:岩や水草に生える糸状のコケ。ある程度伸びてから除去する。
・アオミドロ:初期は細い釣り糸状だが、時間の経過とともに太くからみあうようになる。
・茶ゴケ・珪藻類(けいそうるい):パウダー状で付着力は弱いが、いたるところに発生する。
・藍藻:原核生物シアノバクテリアと呼ばれる細菌の一種。どろりとした膜状で悪臭を放つ。
・アオコ・グリーンウォーター:水槽内が緑色に濁る。アオコは藍藻系、グリーンウォーターは緑藻系といわれている。
・斑点状藻:石やガラス面に発生。基本は緑色をしており付着力が強い コケが発生する原因としては、主に次のようなものが挙げられます。
・バクテリアが不足している
・餌の量が多すぎる
・水草用の肥料が多すぎる
・水槽や砂利の清掃頻度が少ない
・魚の過密飼育 ・直射日光が当たっている
コケの胞子はいたるところに存在しており、環境が整うと急激に増殖します。どんなに清潔に保っているつもりでいても、コケの発生は完全に抑制できません。
コケは自分で除去することもできますが、コケを食べてくれる生体を入れることにはたくさんのメリットがあります。
いくらキレイ好きな人でも、毎日ひんぱんにコケ取りをするのは困難です。コケを食べる生き物たちは、毎日休みなくせっせとコケを食べ続けてくれます。
コケの小さな身体は人の手の届かないような隅まで入り込み、掃除をしてくれます。また、人間には見分けのつかないような小さなコケまで取り除いてくれます。
飼育されている魚にとっても、コケ掃除を生物に任せた方がストレスになりません。
コケを目の敵にするあまり、毎日腕を突っ込んで清掃に励めば、その分に魚には脅威を与えます。
せっかく水槽をきれいにしても、そのせいで魚が死んでしまっては意味がありません。 小さな生き物がコケを食べる姿は、それだけでも癒やされます。
観賞する対象が増え、アクアリウムが美しく保たれるのならば一石二鳥です。
コケを食べてくれる生き物にはメリットばかりを感じてしまいますが、知っておかなくてはいけないデメリットもあります。コケを食べる生き物たちは、コケだけを食べるわけではありません。コケも食べる、というだけで普通の餌も食べる生き物がほとんどです。そのため、コケだけではかわいそうと考えて餌をたくさんあげていると、それだけでお腹がいっぱいになってしまい、コケを食べてくれなくなります。せっかくコケ取りのために入れた生き物なのに、食べてくれないと入れた意味がなくなってしまうでしょう。魚に餌を与える際、魚が食べきれる量を意識してください、余らせてしまうと、コケ取りをするはずの生き物が残りを食べてコケを食べなくなります。
そしてもう1つ、コケを食べてくれる生き物を入れると、見た目が少し悪くなるというデメリットもあります。もちろん鮮やかさをプラスしてくれる生き物もいるのですが、少し地味なものも多いでしょう。見た目を重視する場合は、コケを食べてくれる生き物を入れないほうがいいかもしれません。
・ヤマトヌマエビ:コケ取りの代表的存在です。コスパが良く効果も高いのですが、水草の食害の可能性があります。淡水では飼えません。
・ミナミヌマエビ:身体が小さいのでその分効果は下がりますが、食害の心配はありません。自然繁殖を行い、水温への適応範囲が広いのが特徴です。
・オトシンクルス:吸盤のような口で、ガラスや岩に付着したコケをはぎ取って食べます。コケが主食のため、餓死を防止するためにはコケ以外の餌に慣れさせる必要があります。
・オトシンネグロ:オトシンクルスよりもコケを取る能力に優れています。価格は、オトシンクルスよりもやや高めです。
・サイアーミーズフライングフォックス:あまり駆除する生物がいない黒ひげゴケも強力に駆除しますが、気性が荒く、縄張り意識が高いため、飼育数が制限されます。最大15センチまで成長します。
・プラティ:可愛らしい容姿で愛好家も多い魚です。コケの防止効果が期待できます。
・ゴールデンアルジイーター:「藻を食べる者」という名前の魚です。ただしコケを食べるのは幼魚のみで成長すると20センチ台まで大型化し、コケの除去をしなくなります。
・プレコ:見た目のユニークさで人気が高く、吸盤のような口でコケを掃除します。大型のものは歯が鋭く、水草や他の魚に被害が及ぶ場合もあります。
・フネアマ貝:カノコ貝の仲間でガラス面にぴったりと張り付き、強力なコケ除去能力を持っています。
・石巻貝:コケを除去する貝の代表格です。ガラス面を掃除しながら移動します。脱走する恐れがあるので上部は密閉しておかなければなりません。
・サザエ石巻貝:サザエのような角をもつ石巻貝の仲間です。ガラス面や岩のコケを食べます。
・シマカノコガイ:縞模様が楽しい、コケ除去能力の高い貝です。
・ラムズホーン:カラーが美しい水槽の中のカタツムリに似た貝です。コケや残飯の強力な処理能力を持っています。
・マシジミ:淡水の砂地に生息している二枚貝で、高い水質浄化作用を持ちます。
コケの掃除をしてくれる生体はとても重宝する存在ですが、残念なことに多種多様なコケをすべて片付けてくれるような生き物はいません。
そのため環境に合わせて、対応する生体を選択する必要があります。
コケを食べる生体と、除去可能なコケの関係は次の通りです。
コケの種類 | 対応可能な生体 |
---|---|
黒ひげゴケ | サイアーミーズフライングフォックス |
糸状藻 | ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ、プラティ、ブラックモーリー、フネアマ貝、石巻貝、サザエ石巻貝、ラムズホーン |
アオミドロ | ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ |
茶ゴケ・珪藻類 | オトシンクルス、オトシンネグロ、サイアーミーズフライングフォックス、ゴールデンアルジイーター、プレコ、フネアマ貝、サザエ石巻貝、ラムズホーン |
藍藻 | ブラックモーリー |
アオコ・グリーンウォーター | マシジミ |
斑点状藻 | オトシンクルス、オトシンネグロ、ゴールデンアルジイーター、フネアマ貝、石巻貝、サザエ石巻貝、ラムズホーン |
コケ取り生体と対応できるコケでご紹介しているように、コケを食べる生き物といっても、生き物によって好むコケと好まないコケがあります。好むコケはどんどん食べてくれるけど、好まないコケだけは増えていってしまう、という環境ではコケ取りが不十分です。どうしたら複数のコケをちゃんと取ってくれるのか、対処法をご紹介します。
好むコケは生体によって違うので、同じコケを好む生体は複数入れず、好むコケが違う生体を複数入れてみましょう。それぞれが違うコケを食べてくれるので、まんべんなくコケを減らすことができます。ただし、コケ取り生体と呼ばれる生体同士でも相性があります。相性が良くない同士を入れてしまうと、水槽の中の水質管理や温度管理が大変になってしまいますし、生体も居心地が悪くなってしまうでしょう。違うコケを好む生体で、相性の良い同士を選んでください。
コケ取りをする生体として販売されているものの、あまり力を発揮してくれない生体もいます。せっかくコケをとってくれると思って飼ったのに、役に立ってくれない生体は入れた意味がなくなってしまいます。まったく意味がないというわけではなくても、想像よりも働きが悪い生体はいます。ショップでコケ取り能力をしっかりと持っているかどうか確認し、購入するようにしましょう。
コケ取り生体を入れておくと、コケがそれほど気にならず水質も保たれやすくなります。しかし、コケ取り生体がいてもどうしようもないコケもありますし、あまりに量が多いと食べきれずにコケが発生してしまいます。その場合、コケ取り生体に頼りすぎず違う方法で予防や対処もしておきましょう。
コケの種類にもよりますが、それぞれ除去液などが販売されています。コケを予防する効果や対処する効果が期待できます。また、フィルターの掃除をする、定期的に水換えをする、照明の時間を減らす、水草の栄養剤を減らすといった方法が必要です。また、魚に与える餌は増やしすぎない、というのもポイント。食べきれなかった餌は、下に沈んで老廃物となります。コケ取り生体もそれを拾って食べるので、コケじゃなく餌を先に食べてお腹がいっぱいになり、コケを食べなくなる可能性があります。せっかくコケ取り生体を入れていても意味がなくなってしまうので、餌の量は魚たちに必要な量だけにしてください。また、一度でたくさん与えるのではなく、こまめに少しずつ与えることをおすすめします。
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